家電メーカーの未来を占う

cameraR6

パナソニックのミス

大手家電メーカーのパナソニックが新発売するミラーレス一眼カメラの紹介サイトに有料の写真素材が使われていたという問題がニュースになっています。
自社のカメラを紹介する際にそのカメラで撮った写真を使わず、違うカメラで撮った写真を利用していたという話です。

このニュースは表面的にみれば凡ミスにすぎませんが、このような失敗が起きてしまう真因は「カメラの価値とは何か?」という重要な問いがないせいだと考えられます。実際にそのカメラでは撮れない写真を掲載していることは虚偽の記載であることはもちろん、価値のアピールという観点がなかったことが伺えます。

最強のライバル

ミラーレス一眼カメラを買う大きな理由はスマホよりも「いい写真/映像が撮れること」にあります。
最大の敵はカメラではなく、スマートフォンです。
スマホで同じ品質の写真が撮影できるのならば、ミラーレス一眼カメラを買う必要はありません。
最新版のiPhoneを用いれば、素人目には10万円程度のミラーレス一眼カメラと同等レベルの写真が撮れてしまいます。
必然的にスマホカメラと性能に大差のない安価なデジタルカメラは売れなくなってきています。
単に見たものを記録するだけの用途であれば、他の機能を備えて同価格帯にあるスマホに淘汰されることは避けらません。

カメラの評価軸について

写真の良さを決める評価軸は変化しています。
かつては画質(画素数)がカメラの良さを決める重要な評価軸でした。
10万円程度の民生機器では人の肉眼で見えている映像には遠く及びませんでした。
それが今は頭打ちとなり、どのカメラ/スマホでもそれなりに緻密で忠実な写真が撮れるようになりました。
その反動か、最近では画質の低い昭和のカメラを使って写したようなトーンの味のある作品が「エモさ」という価値になっています。

動画撮影についてもスマホの性能は飛躍的に向上しています。スマホとの差別化として一眼カメラではシネマティックな色表現や一眼カメラならではの「ボケる」表現が着目されています。

忘れられた顧客

本来、パナソニックは自社の新商品カメラだけの価値を消費者に伝えることで魅力をアピールしなければなりませんでした。
問題のカメラの予定販売価格は20万円を超えています。価格に見合った他社とは一線を画す価値提供が求められています。

ただ、往々にしてメーカーはエンドユーザー目線(末端にいるカメラユーザー個人の目線)を失っています。
細かな仕様、細かな新機能、価格設定や原価、カラーバリエーションなどを伝えることに気を取られて、肝心な目的や用途のアピールをすっかり忘れているのです。