日本を代表するゲーム制作会社「スクウェア・エニックス(通称スクエニ)」の決算報告で公表されたコンテンツ廃棄損について見当違いのコメントがSNS上で散見されています。
そこで本コラムでは実際のところを解説したいと思います。
コンテンツ廃棄損の意味
◎結論、開発中のゲームタイトルの幾つかがお蔵入りしてしまったと考えられます。
ダメそうなゲームタイトルの開発に見切りをつけて中止することで経営のテコ入れを図っているということでしょう。
× コンテンツ廃棄損は221億円の赤字という意味ではありません。
× 売価にして221億円相当の在庫(製品)を捨てたわけでもありません。
スクエニ公式発表より
公式発表には以下のように書かれています。
「制作を中止し廃棄するものは廃棄し、見込んでいた収益が上がらないものは一掃したいという事で、特別損失を計上・・・」
ここで「計上」とは、会社が作る決算書という重要な書類に記載することです。
また「特別」とは、「臨時の」という意味合いになります。
特別損失の損失について
決算書上の「損失」は、一般的にいう「損をした」という言葉の使われ方とは異なります。
コンテンツ廃棄損は在庫の予定売価や想定売上高ではなく、221億円は2023年度以前にかかった開発費です。
単年度(1年間)のみの合計とは限りません。
大金をかけて作ったゲームを販売できなかったことはネガティブな話題ですが、コンテンツを廃棄しても、廃棄しなかったとしても221億円は過去の話なので戻ってくることはないということです。
それではそもそも、コンテンツ廃棄損を計上することに何の意味があるのかというと節税に繋がるからです。
ソフトウェア資産と損失
コンテンツ廃棄損に至る前提としてスクエニはソフトウェアを資産として計上しています。
宝石・家・車のような目に見える財産だけが資産ではありません。
会社においてはソフトウェアのような形のないものも資産として扱われます。
決算書上の資産額は見込み額ではなく、使った金額や支払った金額に基づいて決まっています。
もしも、あるときは22.1億円、あるときは2,210万円というように自己申告で価値を加減できるのならば、利益操作が可能となるため、簡単に税金逃れができてしまいます。
スクエニ発表のまとめ
今回のニュースは言い換えるならば、221億円の資産を決算書上から消したという報告でした。このような多額の損失計上は経営上の重要事項であり、スクエニの利害関係者に対しての説明責任でもあります。
なお、一旦はコンテンツ廃棄損としておきながら、折を見てコンテンツを復活させる(廃棄したと見せかけて開発を再開する)ことは不正な処理になります。
余談
FF7のリメイク作品の続編の開発のような2023年段階では着手していない仕事にかかるであろう人件費など未来の話はコンテンツ廃棄損には含みません。
時系列からみて、この数ヶ月でリリースされた新作ゲームタイトルの失敗が影響していることはありません。